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熊本県八代にある心理カウンセリング・ルーム「メンタル・ケア・ハウス」です。

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心の救急箱First-aid kit at the heart


 八代・水俣・芦北地区で発行されていました『DUSUKINディーネット』。
 2008年8月から11回にわたり私(清原加代子)のエッセイが掲載されました。
 題して「心の救急箱」
 私が日頃想い描いている心のあり様を綴ってみましたので、お読みいただけると嬉しいです。

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    第7回 〜 悲 し み 〜
   
 チリン、チリリーン…夏の風に誘われて、風鈴が爽やかな音色を奏でています。涼風が心や体を通り抜けていくようです。すばらしい「和の知恵」ですね。
  日本人は昔から「感情の大切さ」に気付き、排泄したり、癒したりする術を尊んできました。特に江戸時代までは。 古来、日本人は男女を問わず泣いたようです。人目を気にせず、声を荒らげて、涙をボロボロ流しました。戦国時代、共に戦った仲間の亡きがらを抱きしめて、武将も大泣きして「悲しみ」を表出したそうです。感情を手放してこそ前に進めるということを経験的に習熟していたのです。
 涙には「コルチゾール」というストレスホルモンが含まれていますから、涙を流すとストレス成分を放出できます。泣いた後でスッキリするのには、医学的根拠があるわけです。

  「悲しみ」は、ネガティブなものと誤解されがちですが、実は、過去に対して使うために必要な感情です。
 愛する人との死別、大切な人との離別、可愛がっていたペットとの別れ。人は大事なものを失くしたとき、「悲しい」という感情を使います。これは、不快感をいつまでもひきずらず、平常心に戻って「今ここ」を生きるためにとても重要なことです。深く悲しむことで、初めてそれを受け入れ、「さよなら」することができます。過去に起きた出来事を変えることはできませんが、そのとき感じた感情を肯定し、解放することで心身は安らぐのです。

  実際に、私が対応した「心身症」の中年男性の方を例に挙げてみます(ご本人の了解を得ています)。その男性は幼い頃、最愛の母を病気で亡くし、悲しさいっぱいで泣きたかったのに、父親から「お前は長男だから涙をこらえて、弔問客に挨拶しなさい」と言われ、それ以来「悲しみ」を外に表さなくなり、また「悲しい」と感じる自分をも拒絶するようになっておられました。ところが、カウンセリングでその経験や思いを語りながら、「悲しみ」を表出することは、自分にとっても、また他界した母親にとっても、どちらにも大切な行為であることに気付かれ、「お母さん」と言って、大粒の涙を流されたのです。すると、無駄な肩の力が抜け、晴れ晴れとした表情になられ、「封印していたものを排泄し、とても楽になった」と言われ、同時に、幼くして母を亡くした喪失感や、泣くことを禁止した父への反感も解消し、むしろ自分を愛してくれた両親への感謝の思いが優位になられたのです。そして、けなげに生きてきた自分に対しての愛しさへと変容し、自尊感情が高まり、やがて偏頭痛まで治まり、心身ともに元気になっていかれました。

 生きていると辛い出来事があるのは当然です。「悲しみ」を閉じ込めるのではなく、正直に表出し、泣くことの方が健康的です。ですから、現在子育て中の方で、お子さんに対して「メソメソするな」とか「涙をこらえろ」などの声かけが多いとしたら、時には「悲しいよね」と言って、肩を抱いてあげる方が感情のバランスが取れて、情緒の落ち着いたお子さんに育ち、信頼しあえる親子関係に発展するかもしれません。家族にすら理解してもらえず、「分かってもらえない悲しみ」で二重に孤独感を味わっている人は結構多いようです。老若男女、誰もが悲しんでいいのです。
 そして、「悲喜こもごも」という言葉があるように、「悲しみ」を手放した後には、「喜び」が訪れてきます。




     
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